風の便り

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第70便 山を越える修行僧

山を越える修行僧仏道の修行をする師と弟子が、二人で旅をしていました。その旅の途上で、川に差し掛かったところ、若い女性が、川の前で立ち往生をしていました。着物の裾をあげ、歩いて川を渡ろうとしたのですが、流れが急で、渡れなかったのです。それを…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第68便 玄人の「素人らしさ」

玄人の「素人らしさ」プロフェッショナルとは何か。 そのことを考えさせるエピソードがあります。ある自治体選挙でのことです。 二人の候補者が争う選挙において、 両陣営の選挙自動車が街中を走りまわり、 住民に対して支持を呼びかけています。その選挙戦…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび 第67便 「存在」から「生成」へ

「存在」から「生成」へ ノーベル賞科学者、イリヤ・プリゴジン博士の著書に、 『 From Being to Becoming 』という書があります。『存在から生成へ』と訳されるこの書は、 一つの深遠な問いに対する答えを求め 書かれたものです。この宇宙137億年の歴史…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび 第65便 本当の「商品」

本当の「商品」 若き日に、優れた上司から、 大切なことを学びました。ある調査会社が、その上司に、仕事を求めてきたのです。 そこで、その会社の部長と担当者に会うことになりました。しかし、先方との会合が始まっても、私の上司は、 その部長と雑談をす…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第64便 21世紀の「地球観」

21世紀の「地球観」かつて、ローマクラブという世界的なシンクタンクが、 『成長の限界』という報告書を発表しました。 人類が現在のような経済成長を続けていくと、 数十年以内に、人口爆発、食糧危機、資源枯渇、エネルギー不足、 そして環境汚染という…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第62便 「砂絵」の絶対矛盾

「砂絵」の絶対矛盾 チベット仏教に、砂絵曼荼羅というものがあります。大切な儀式に際して、 仏教の僧侶たちが、 五色の砂を用い、七日間かけて、 極色彩の曼荼羅を描くのです。この砂絵曼荼羅の儀式においては、 それを行う僧侶に、 超人的な集中力と忍耐…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第61便  「未来」に書かれたもの

「未来」に書かれたもの 名作映画『アラビアのロレンス』の中で、 ピーター・オトゥール演じる、英雄ロレンスが、 アラビア人兵士の部隊を率い、 灼熱の砂漠を越えて進軍する場面があります。 このとき、兵士の一人が疲労困憊のために落馬し、 砂漠に一人取…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第55便  天が与えた本当の才能

天が与えた本当の才能 『未知との遭遇』や『E.T.』などの作品で知られる 映画界の巨匠、 スティーブン・スピルバーグ監督には、 新しい作品を創る前に、 かならず観る映画があります。 それは、彼が尊敬する デビッド・リーン監督の作品、 『アラビアの…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第54便  「魔境」の入口

「魔境」の入口 将棋の羽生善治棋士が、 かつて、七冠を達成した直後のテレビ出演において、 ある若手哲学者と対談し、質問を受けました。 羽生さんは、対局中、 どのようなことを考えているのですか。 羽生棋士の、その質問に対する答えは、 静かな驚きを禁…

田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第45便   「師の一言」によって訪れるもの

「師の一言」によって訪れるもの 学生時代、スキーを習っていたときのことです。 急な斜面の滑り方を覚えるために、 若手のコーチについて教わっていたのですが、 なかなか滑れるようになりませんでした。 エッジの利かせ方、膝の屈伸、体重の抜重、 前傾姿…