田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第68便 玄人の「素人らしさ」

玄人の「素人らしさ」

プロフェッショナルとは何か。
そのことを考えさせるエピソードがあります。

ある自治体選挙でのことです。
二人の候補者が争う選挙において、
両陣営の選挙自動車が街中を走りまわり、
住民に対して支持を呼びかけています。

その選挙戦のさなか、ある選挙事務所の前を、
味方の陣営の選挙自動車が、支持を訴えながら、
通り過ぎていきました。

その呼びかけを行う運動員は、
語りのプロフェッショナルらしく、
よく通る声と流暢な話し振りで支持を訴えていました。

しかし、それを聞いた事務所の選挙参謀が、
表情を曇らせ、呟きました。

「あの喋り方では、駄目だ。
あれでは、住民の気持ちが離れてしまう」

しばらくすると、その事務所の前を、
相手陣営の選挙自動車が通り過ぎていきました。

その自動車から聞こえてくる運動員の声は、
草の根の支持者が喋っているらしく、
素人らしい訥々とした声で、支持を訴えていました。
しかし、そのため、その喋り方は、
親しみと共感を覚えるものでした。

それを聞いた選挙参謀が、
悔しそうに、呟きました。

「あれは、本当は、素人じゃない。
実は、プロの役者が喋っているんだ。
あちらの選挙事務所が、一枚上手なんだよ」


このエピソードは、我々に、
大切なことを教えてくれます。


素人の気持ちが分かる。


それが、本当の玄人、
本当のプロフェッショナルなのでしょう。



2003年2月13日
田坂広志





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田坂広志 「新しい風」 「ウェブ2.0革命」の対談
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田坂です。

日本ユニシスが発行する
『Club Unisys+PLUS』5月号に掲載された
インプレスR&D代表取締役の井芹昌信さんとの対談が、
サイト「Club Unisys+PLUS」に
掲載されました。

対談のテーマは、

『知の共鳴から、「革命」は始まる』

です。

この対談は、小生の近著、
『これから何が起こるのか』(PHP研究所)にもとづき、
これから「ウェブ2.0革命」が、どのように
企業や市場や社会、そして、資本主義を変えていくかを
井芹さんと、語り合ったものです。

この対談から数ヶ月、
すでに「三次元仮想空間 セカンド・ライフ」の動きなど、
「ウェブ3.0革命」の姿も見えてきました。

この「ウェブ3.0革命」のビジョンについては、
月刊誌「Voice」の8月号に、小論、

「誰もが『ダ・ヴィンチ』になる社会」

を載せましたので、興味のある方は、お読みください。

また、この井芹さんとの対談に興味のある方は、
私の公式ブログ「新しい風」をご覧ください。
http://blog.hiroshitasaka.jp/


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「風の対話」 「パーソナル・メディア」の戦略
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今週は、シリーズ
『プロフェッショナル進化論』の第10回、

「パーソナル・メディア」の戦略

をテーマとして話します。

プロフェッショナルが個人シンクタンクへと進化するための
第2の戦略は、インターネットというメディアを、
自分のメッセージを世の中に発信していく
「パーソナル・メディア」にすることです。

しかし、そのためには、
個人サイトやメールマガジン、ブログなどを通じて
ただ、自分が語りたいメッセージを
世の中に発信すればよいわけではありません。

インターネットを「パーソナル・メディア」にするためには、
プロフェッショナルとしての明確な心構えと
具体的な戦略が必要なのです。

この第10回では、その心構えと具体的戦略について、
話します。

この番組をお聴きになりたい方は、
下記のサイトをご覧ください。
http://www.hiroshitasaka.jp/taiwa/kaze.php

また、これまでCDでお聴きいただいた
「風の講話」や「風の対話」を
オーディオブックのポータルサイト「Febe」から、
音声ファイルで、ダウンロードできるようになりました。

「風の講話」や「風の対話」を
音声ファイルでお聴きになりたい方は、
下記のサイトから、お申し込みください。
http://www.febe.jp/sophia/index.html

なお、この「風の便り」は、
8月の配信は、休ませていただきます。
9月より、また配信を再開いたしますので、
引き続き楽しんでいただければ、幸いです。