田坂広志 「風の便り」 ふたたび  第54便  「魔境」の入口

 「魔境」の入口



 将棋の羽生善治棋士が、
 かつて、七冠を達成した直後のテレビ出演において、
 ある若手哲学者と対談し、質問を受けました。


  羽生さんは、対局中、
  どのようなことを考えているのですか。


 羽生棋士の、その質問に対する答えは、
 静かな驚きを禁じえないものでした。

  ときおり、対局中に、
  心が、ふっと
  魔境に入りそうになるのです。


 この答えに対して、
 若手哲学者は、無邪気に聞きます。


  なぜ、その魔境に入ってみないのですか。


 これに対して、羽生棋士は、
 いつもの爽やかな表情で、答えました。


  ええ、戻って来れなくなると困りますから。


 たしかに、この「魔境」とは、
 座禅などにおいて、深い瞑想状態に入るとき、
 ときおり陥ってしまう特殊な精神状態のことであり、
 決してそこに入ってはならないと教えられるものです。

 しかし、この微笑ましい対話の、
 その奥を、深く見つめるとき、
 そこに、極限の真実が潜んでいることに
 気がつきます。


  精神の営みの最も創造的なものは、
  精神が、まさに混沌へと向かう、
  その入口において、生まれる。


 そのことに、気がつくのです。



 2002年11月7日
 田坂広志





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 田坂広志 「新しい風」 「JSEF Community Mail」を創刊
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 田坂です。

 社会起業家フォーラム(JSEF)では
 3月27日より、
 「JSEF Community Mail」の配信を始めました。

 このメールは、
 フォーラム・メンバーの方々の
 さまざまな活動やメッセージをお知らせするために
 社会起業家フォーラムの登録メンバーの方々へ
 お送りするものです。

 この「JSEF Community Mail」が
 フォーラム・メンバーの方々の活動の
 相互交流や相互支援への一助となることを願います。

 また、この「JSEF Community Mail」において
 紹介させていただいたメッセージは、
 下記のブログにも、掲載していますので
 これらのメンバーの方へのメッセージは
 ブログのコメントやトラックバックで、お送りください。
 http://www.jsef.jp/blog/


 なお、これまで、サイトで紹介させていただいた方々についても、
 このブログで、最新の活動を紹介させていただきますので
 下記のサイトから、現在の活動をお知らせください。
 http://www.jsef.jp/sekai/messageform.shtml


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 「風の対話」 シンクタンク進化論
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 今週の「風の対話」では、
 昨年7月に放送したシリーズ、

 『シンクタンク進化論』の第1回、

 「21世紀のシンクタンク 5つの進化」

 をお送りします。

 これまで、25年を超える歳月、
 シンクタンクと呼ばれる世界で仕事をしてきました。
 1981年に、民間企業で初めてシンクタンク業務に携り、
 1987年からは、米国シンクタンク、バテル記念研究所において
 世界のシンクタンカーと共に働き、
 1990年には、日本総合研究所の設立に参画し、
 そして、2000年、ソフィアバンクというシンクタンクを設立し
 活動してきました。

 その25年の歩みを通じて見えてきたものは、
 社会とシンクタンクの未来の姿でした。

  21世紀、社会には「5つの変化」が起こり、
  シンクタンクは「5つの進化」を遂げていく。

 そして、このビジョンにもとづき、
 「5つの進化」を実現するために設立したのが、
 ソフィアバンクでした。

 これからの時代、シンクタンクは、
 これまでのシンクタンクとは全く違った社会的機能へと
 進化していきます。

 そして、これからの知識社会においては、
 すべての企業がシンクタンク機能を持ち、
 すべてのビジネスパーソンにシンクタンカーの智恵が
 求められるようになります。

 この第1回では、シンクタンクの「第1の進化」、

  「ナレッジ・シンクタンク」から、
  「ディープナレッジ・シンクタンク」への進化

 について話します。 

 この番組をお聴きになりたい方は、
 下記のサイトをご覧ください。
 http://www.hiroshitasaka.jp/taiwa/kaze.php