田坂広志 「風の便り」 ふたたび 第65便 本当の「商品」

本当の「商品」



若き日に、優れた上司から、
大切なことを学びました。

ある調査会社が、その上司に、仕事を求めてきたのです。
そこで、その会社の部長と担当者に会うことになりました。

しかし、先方との会合が始まっても、私の上司は、
その部長と雑談をするだけで、本題に入りません。

相手も、その雑談に、快く相づちを打つだけです。
そして、若い担当者は、黙って側に控えているだけです。

しかし、その担当者には、なぜか、眼光の鋭さを感じます。
妙な存在感があるのです。

そのうち、予定していた時間が過ぎました。
すると、上司は、
その雑談だけで、会合を終えたのです。

しかし、先方を見送って部屋に戻るとき、
その上司は私に言いました。

あの会社に、例の調査を頼んだらどうかな。

突然の切り出しに、少し戸惑いながら、
私は聞き返しました。

しかし、あの会社の調査能力は、先ほどの会合では、
ほとんど分からなかったのですが。

そのとき、この上司が語った言葉が、忘れられません。

その点は大丈夫だろう。
あの若い担当者、
いい面構えをしていたからな。


このとき、私は、大切なことを学びました。


我々が、顧客から仕事を得るとき、
買っていただくのは、「商品」ではない。
買っていただくのは、「人間」である。


そのことを学んだのです。



2003年1月23日
田坂広志





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田坂広志 「新しい風」『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか』
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田坂です。

7月18日に、私の新たな著作、

『なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか
− 人間の出会いが生み出す「最高のアート」』

が、PHP研究所から上梓されます。

なぜ、我々は、自ら「重荷」を背負うのか。

なぜ、我々は、部下や社員の人生を預かるという
マネジメントの「重荷」を、自ら背負うのか。

それは、
このマネジメントの道が、
その重荷を背負うことによって、
人間として大きく成長できる道だからでしょう。

そして、
マネジメントの道を歩むことによって、
我々マネジャーが巡り会うことのできる
「奇跡」がある。

この新著では、そのことを語りました。

なお、7月17日に開催される
私の特別講演会
「なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか」
では、この新著の内容に沿って話をします。

また、この講演会の開催にあわせて、
紀伊國屋書店・新宿南店の3階において、
私の著者フェアが開催されています。

この著者フェアでは、
「新しい時代の生き方と働き方」をテーマに、
私の著書15冊が紹介されています。

『なぜ、働くのか』
『プロフェッショナル進化論』
『これから何が起こるのか』
『自分であり続けるために』
『使える弁証法
『これから知識社会で何が起こるのか』
『仕事の思想』
『仕事の報酬とは何か』
『人生の成功とは何か』
『なぜ、時間を生かせないのか』
『意思決定12の心得』
『経営者が語るべき「言霊」とは何か』
『なぜマネジメントが壁に突き当たるのか』
『企画力』
『営業力』

この特別講演会とブックフェアを
企画、開催していただいた
紀伊國屋書店・新宿南店の
道端成雄さん、吉野裕司さんに、お礼を申し上げます。


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「風の対話」 日本社会のイノベーション戦略
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今週は、特別シリーズとして、
ソフィアバンク・ラジオ・ステーションで放送した
『日本社会のイノベーション戦略』の第1回、

いま、なぜ社会起業家が求められるのか

を、お送りします。

いま、世の中では、「イノベーション」という言葉が
注目されています。
政府は、「イノベーション25戦略会議」で政策を発表し、
日本経団連経済同友会も、
イノベーションに関する政策提言を行っています。

では、これから日本社会は、
どのようなイノベーション政策と戦略を
取っていくべきなのでしょうか。

この問いに対して、我々が気がつくべきは、
いま、「ウェブ2.0革命」によって、
最大のイノベーションが起こっていることです。

それは、経済活動におけるボランタリー経済の増大と
マネタリー経済との融合です。

そして、この「経済原理」のイノベーションは、
これから、資本主義そのものの在り方を変えていく
最大のイノベーションになっていきます。

この第1回では、そのことについて話します。

この番組をお聴きになりたい方は、
下記のサイトをご覧ください。
http://www.hiroshitasaka.jp/taiwa/kaze.php


また、これまでCDでお聴きいただいた
「風の講話」や「風の対話」を
オーディオブックのポータルサイト「Febe」から、
音声ファイルで、ダウンロードできるようになりました。

「風の講話」や「風の対話」を
音声ファイルでお聴きになりたい方は、
下記のサイトから、お申し込みください。
http://www.febe.jp/sophia/index.html