素材のサンプリングと再構築

ニコニコ動画の多くの作品では、素材のサンプリングと再構築が見事に行われています。素材のデジタル化、編集ソフトの発達により敷居が下がったことのなせる状況ですが、この構造自体は新しいモノではありません。

作品の素材となっているアニメ作品の多くは、古くからのテレビ作品の消費を通じて形成された共通の認識を意識したサンプリングと再構築が随所に見られ、見る側もそれを受け入れています。話のスタイル、人物の記号化など、再構築の中からパターンも生まれてきています。

しかしながら作家性の強いモノでありますから、創作者に蓄積された背景が投影され、新たな作品が創出されていきます。そして、それも次のサンプリングの素材となっていきます。

コンピュータのプログラミングにおいても、アルゴリズムとデータ構造の発見が数学的背景、計算機科学的背景、計算機工学的背景から始まり、そのサンプリングと再構成の過程の中で数々のパターンが発見されてきました。ライブラリやフレームワークはそういったパターンの集積です。

さて、サンプリングする対象には、著作権があります。元々は、書籍の複製を作る権利など出版文化(活版印刷以降)の歴史と一緒に生まれ、発展してきた考え方です。版権(印刷の鉛の版の権利)を守り、複製を制限するという方向性です。

これが、音楽作品、映像作品、コンピュータのプログラムにも発展し、今日に至っているわけですが、コンピュータのプログラムにおいては、Copyright に対して Copyleft という、著作権を保持したまま、複製、改変を自由に行えるという考え方が、80 年代半ばから発達してきました。この考え方が、コンピュータの利用を自由にしてきた一翼を担っていたと言えます。

コンピュータの発達により、音楽、映像、文学の発信者に誰もがなりうるようになると、プログラムだけではなく、これらにも同様に著作権を保持したまま、二次利用できるようにしようという考え方が生まれてきました。GFDL で提供される Wikipedia や、クリエイティブ・コモンズなどが代表的です。

国内において、創作者が権利を持ちつつ、利用について柔軟に定義できるような情報流通仕組みの整備が望まれます。

森田