色々なオススメについて

先日「アイデア・ブック2」の記事の中で、Amazon のオススメが残念なことになっていると書きました。

その後 EC サイトの開発やマーケティングを一緒にやっていた仲間と、昨今のオススメについて議論する機会がありましたので、オススメについてまとめてみます。

Amazon のオススメは基本的には「協調フィルタリング」という手法に基づいています。単純化すると、同じモノを買った人が買っているモノを、買う可能性が高いという考え方になります。

Amazon の場合、モノ自体の属性の比重は低いようで、その人の属性や嗜好に合わないモノを、他の人が買っているからという理由でオススメしてきます。この部分が、最近の Amazon の残念なことになっていると思った所以です。もちろん、この問題に対して、「好みではない」、「すでに持っている」などのフィードバックが行え、オススメの提示に反映されるようです。

Amazon のモール・プラットフォーム (マーチャント@Amazon.co.jp) としての強みは、このオススメの裏にある高度なデータベース技術が、出店しているショップや商品の種類に関わらず横断的に働き、競合に対して現時点では優れていること。SEO 的にやるべき事が行われていること。であると考えられます。検索エンジンがここまで入り口として一般的になると、モールのトップページの価値は下がってしまい、楽天Yahoo! ショッピングに代表される、モールトップからの横断検索の強みは薄れています(楽天は Gold の店は素晴らしいのですが、検索上位の店が必ずしも素晴らしくないところが残念です。Yahoo! は、出店数を絞っていたころは質が良かったです。その意味では、Amazon は出店数は少ないですが質は高いと思います。)。

モノの属性に注目したのが、コンテンツベースのオススメで、モノの属性に基づいて、どの程度一致するかなどにより行われます(属性をベクトル空間にマッピングして、類似性を判断する方法などがあります(ベクトル空間モデル)。)。モノの属性(音楽であれば、ジャンル、作曲者、アーティスト、自動車であれば車種、排気量、燃費、色・・・といった属性)が重視され、テキストやキーワードがそれを補助します。データの精度のあるメンテナンスが前提となりますが、ある程度以上の人数が見込めるのであれば、ソーシャルなメンテナンスの可能性もあります。音楽データやクルマなどで使われているそうです。

昔のデータベース検索とは違い、多軸でコンテンツの類似度による判断が出来るようになってきており、商用データベース製品では、コンテンツベースのマッチング機能を取り込んでいるものがあります。

確率論によるオススメは、迷惑メールのフィルタリングにも使われているベイズの定理に基づいた方法が知られています。モノとモノ、モノとヒト、ヒトとヒトの関連する確率を学習させ、新しいモノが出てきたときに、どのモノと類似しているか、どのヒトと類似しているかという推定を行わせるというモデルです(友人が取り組んでいるモデルです。)。

ブログに貼ってあるアフィリエイトで成功しているのは、媒体としてキャラクターが立っているブログ所有者による誘導に限定されるのかと思います。読者数という力や、個人的な理由による権威化によるオススメです。

SNS の友達によるリストは、知り合いなので意外性という点では乏しく、友達の友達くらいの方が、意外なオススメが期待できます。特化型の SNS では、近い人に「お前は俺か的なリスト」を見かけたりします。近いベクトルの人が集まると収束に向かってしまいます。

SNS は、基本的には隣は何をしているのか分かりませんので、コミュニティ内に限定した濃い広がりが期待できます(セグメントに対するクチコミによる広がり。)。しかし、最近ではマスコミがネットから話題を拾って、再発信することにより、一気に認知されることもありますが、これはネットによるクチコミというよりは、マスコミの目利きと媒体力ということになります。

ソーシャルブックマークは、数と速さが見えますので、話題になっているモノリストとしては優秀ですが、それは自分の嗜好とは関係しません。目立つモノは、さらにブックマークされてより目立つことから、初速を作り出すことに成功すれば、加速度的に目立たせることは可能です。

ソーシャルフィードは、ここ1年ほどの間に出てきましたが、従来のフィード購読に対し、協調フィルタリング的な要素。つまり、このフィードを購読しているヒトは、このフィードも、という方法を導入してきています。さらに、似ているヒトを示して人脈化する仕組みまで持っていたりします(Twitter の Follow のレベルで十分だと思いますが)。

この応用で、専門 SNS とソーシャルフィードについては、その集合を代表する「ネットワークの意志」が発生することが期待できます。ソーシャルブックマークの文脈の集合知ではなく、集合を束ねてシステムが自動的に「まとめ人格」を作り出すというものをイメージしています。こういうものもオススメの一つになっていくのではないかと考えています。

森田