Googleを育てたのはYahoo!

ソフトバンク孫社長、グーグルに宣戦布告--「アジアとケータイを制した者が勝つ」
by CNET

この記事から孫正義社長のインターネット制覇にかける強い思いが伝わってきます。孫社長はもう30年以上もデジタル情報革命を推進することを人生の使命とし、その高い志を持ってソフトバンクを創業し、紆余屈折ありましたが、着実にその道を進んでいます。ソフトバンクがここまで大きくなれたのは、多くの人がYahoo!への投資だと思っていると思いますが、僕は北尾社長が孫社長ファイナンスという武器を持ち込んだことが一番大きいと思っています。事業を興してたった30年で携帯電話事業者を手に入れるまで急成長しているわけですし、成功要因はそれだけではないにしても、1990年代に、特にインターネットの夜明け前に北尾社長と孫社長が出会って、まずコンピュータと金融がくっついた事業モデルが構築されたのが、今日の成功の始まりだと思います。

僕がソフトバンクにいた短い期間で、孫社長との少ないMTGの中で思い起こされることがあります。当時、TV BankYahoo!動画)の動画検索エンジンを企画開発していたときですが、孫社長にランチに呼ばれ、二人で話していたときに、僕は「どうしてYahoo!Googleを採用したのでしょうか、あの時、もしYahoo!Googleを採用しなかったらこれほどGoogleが巨大になることはなかったし、どうしてYahoo!が自前の検索エンジンの開発をしなかったのか不思議です」と質問しました。孫社長の回答は「私は最後まで(ジェリー・ヤンに)反対したんだ。人間が整理するディレクトリは必ず限界が来る。そうなる前にロボットによるサーチエンジンが必要になるだろうから、自前でやるべきだ」と。「あれはYahoo!の最大の過ちだったかもしれない。Googleを育てたのはYahoo!だ。※1」と。

もちろんあの当時、誰もGoogleがこんな巨大な企業になるとも思っていなかったし、検索エンジンがウェブを支配するとも思っていなかったし、検索連動型広告がこんなにも無限の収益を上げるとも思っていませんでした。むしろ検索エンジンは設備産業ビジネスで巨額のサーバ費用がかかるコストセンターだっったのです。しかもYahoo! IncのセメルCEOはハリウッドあがりで、検索よりもメディア事業に興味があり、Yahoo!はインターネットメディアカンパニーにまっしぐらだったということもあります。

孫社長が記事の中で、携帯電話はインターネットマシンになる、と言っているのはその通りで、僕はもはや携帯電話は最も重要な(電話を)かける、受ける、ボタンを「さがす」というサーチボタンにすべきだと思っています。一発でポータルにつながるボタンよりも「さがす」というボタンの方がはるかに利便性が高いはずなのにこれはまだ実現されていません。

GoogleAndroidを足がかりに携帯電話事業に参入し、しかも世界中のキャリア、端末メーカーと組んで一気にグローバルに攻めてくる、という戦略は10年先を見据えたインターネットウェブ戦争の始まりにすぎないでしょう。これは携帯電話戦争ではない、ということをどれだけの人が理解しているか、ということです。

グローバル世界ではGoogleMicrosoftとなり、グローバル対アジアではGoogleソフトバンクとなるのでしょうか。
今年はインターネット、ウェブ、モバイル世界があるひとつの転換期を迎える年になりそうですね。
この革命にぜひ当事者として参加しておきたいものです。

SBI Robo 渡部薫