Yahoo!とYahoo! Japanとソフトバンク?

Yahooのブラックマンデー対策

明日月曜日の夜には米国で株式市場が開くので、今回のマイクロソフトの買収の撤回がYahoo!の株価にどのような影響を与えるかわかるだろう。Yahoo! IncはTechCrunchに書かれているように厳しい状況かもしれないし、Googleとの提携が発表されれば株価はさほどダメージを受けないかもしれない。と昼間書いていたんですが、すでにマーケットが開いて大方の予想通りYahoo!の株価は下がっているようです。
Yahoo!の株価

それよりも日本では、特にYahoo! Japanソフトバンクにはどのような影響が考えられるか考察してみるものもおもしろい。また5月8日(木)はソフトバンクの決算発表会があるので最後の質疑応答はこの手の質問が多くなるだろう。

今回のマイクロソフトの買収撤退を受けて、まずはほっとしているのではないかと思う。ソフトバンクにとってYahoo!が買収されるとYahoo! Japanの技術開発戦略に大きな影響が出るだろうし、ケータイにもマイクロソフトの圧力がかかる可能性もありましたからね。

以下は僕の予想です。
まずソフトバンクの決算発表の肝はもちろんソフトバンクモバイルの携帯電話事業についてであり、2007年度を振り返るものになるだろう。12ヶ月連続純増No1は快挙であり、しかも強調すべきはこの1年間の獲得シェアが約50%だったことが上げられるだろう。おそらく4月も純増No1だから13ヶ月連続である。このようにホワイトプラントとソフトバンクの営業力を持ってすれば、加入者が順調に伸びていることに対して投資家は大満足できることだろう。財務的な数字も主にそこに焦点が当てられ、実際のところARPUは下がっているはずだが、スーパーボーナスの端末の割賦分などが上乗せされ、さほど下がっていないように見えるはずである。3月から始まったディズニーモバイルもここ数ヶ月は順調に加入者を伸ばしているはずで、またホワイト学割もかなりの成果を出していると思われる。このようにマーケティングデータはほぼ非の打ち所がないと思われる。

ボーダフォンを買収してちょうど2年、MNPが始まって1年半経過したが、ソフトバンクは完全に携帯電話市場のリーディングカンパニーであり、ドコモもauも影が薄い状態である。このそしてこの1年を振り返り、4つのコミットメントだった、基地局、端末、サービス、価格でソフトバンク色を出せた1年だったと統括すると思う。

孫社長はこのように国内の携帯電話事業に一段落つき、順調に戦いが推移していることからより本格的にインターネットの戦いに目を向けることができるようになるだろう。その主戦場はPCウェブではなく、モバイルウェブに移すのが次の10年のソフトバンクの戦略である

過去10年ほどを振り返ると、Yahoo! Incに300億出資してからYahoo! Japanを設立し、インターネットのリーディングカンパニーとしてポータルを抑え、2000年にYahoo! BBを立ち上げ、国内のインターネットの風下からポータル、コンテンツまで制覇するのがブロードバンド戦略の方向性だった。ところがこのブロードバンド戦略の前に立ちはだかったのがGoogleという巨大な検索と広告という的と、Web2.0と言われるロングテールのパーソナルメディアと共有ソーシャルメディアだった。残念ながらYahoo! JapanGoogle Japanに対しては有効な手立てが打てたが、Web2.0にはまったく手を打つことができなかった。その結果、ブログ、wikiSNSで存在感を示すことができず、かつ動画においてはYouTubeニコニコ動画に圧倒的にやられてしまっている状態である。

ところが運のいいことに日本のウェブはPCからケータイに移ってきており、2008年はまさにこれまでのインターネットカンパニーがこぞってモバイルに参入しているところであり、ソフトバンクWeb2.0で犯した過ちをモバイルで繰り返さないぞ、という意志の元、ウェブ戦略を考えているだろう。(中の人がどれだけわかっているかは不明)

さて、今、孫正義社長が考えているインターネット戦略とはどんなもんだろうか。まずこの2年決して頭から離れなかったのはドコモやauに対するソフトバンクの戦い方だったはずだが、これはもうしばらく考えるまでもなく勝負あった状態。ドコモ、auの経営陣がホワイトプランと同等以上のものを提供できない限り、世のイメージはソフトバンクに傾いている。今、孫社長が最大の敵と考えているのはドコモでもauでもなく、むしろドコモとauにまんまと検索を提供して足がかりを得たGoogleに他ならない。確実にそう考えているはずだ。そしてこう思っているはず。すでにGoogleは日本のモバイルウェブの検索のシェアの90%以上を取っている。PCウェブの場合はYahoo! JapanGoogle Japanの2倍のシェアを持っているが、ケータイではこれが完全に逆転してしまったどころか、圧倒的なシェアを取られてしまっている。すなわちここにすぐに戦いを挑んでもソフトバンクがドコモやauと競合するキャリアになってしまった以上、Yahoo! Japanがドコモとauの検索シェアを奪うことはできない。さらにソフトバンクにもYahoo! Japanにもモバゲーやmixiニコニコ動画を企画開発、運営できるような人材はなく、コンテンツ企画面での脅威にも晒されている。

したがって、日本のケータイにおけるソフトバンクの取れる戦略は限られている。まずホワイトプランによって加入者を増やす。インフラ事業はとにかく面を取らないと話にならないのでこれは若い層からお年寄りまで幅広く獲得しているので成功している。ホワイト学割によって学生を一気に取り込んでいるのも学生は通話だけで終わるはずがなく結局パケットをパケット定額限界まで使うことを最初から読んでいる。コンテンツをできるだけ無料にしているのもパケットで4000円/月稼げばよいのである。これも比較的目論見通り行っているだろう。しかし仮に若者のパケット定額率を上げても、彼らはネットワークを限界まで使い尽くす諸刃の剣ユーザであり、ここにドコモやauとの設備投資の戦いは厳しいものが待っていると言える。ソフトバンクとしてはホワイトプランで加入者を拡大し、まずは投資家を安心させ、パケット収入によるARPUの向上を目指すが、これもあと1、2年のつなぎの戦略に過ぎない。

ソフトバンクに必要なのは、ドコモやauと外側の土俵で戦うための新しい事業戦略で、それがウェブにあるのはまちがいないのだが、いかんせんモバイルの90%以上は入り口をGoogleに押さえられているところがつらい。。。

このような状況の中、ソフトバンクのウェブへのカードをもう一度整理しておこう。
・国内最大のYahoo! Japan
・中国アリババ
OPI(中国最大手のSNSシャオネイ)への400億円の出資
Vodafone、チャイナモバイルとの合弁会社設立

これらのカードをどのように組み合わせて使って行くか、少し想像力を働かせてみたいと思う。

つづく

SBI Robo 渡部薫