今年もウェブが熱い!? Google編

ウェブ、そのものはGoogle抜きに語ることができません。Googleについて2008年を占ってみましょう。

Googleサーチ
 →世界のウェブでGoogleは引き続きサーチのシェアを伸ばすでしょう。その影でYahoo!サーチ、MSN/Liveは検索分野では苦戦を強いられると思います。しかしながら日本に限っていえばGoogleの成功は限られておりYahoo! Japanのシェアが上がっていく確率はあります。いずれにせよこの現象は日本特有のものでGoogle本体からすると影響はありません。


Google AdWords/AdSense

 →このウェブの経済圏を生み出したシステムはますまず世界に拡大していきます。Googleサーチが伸び続ける限り、AdWordsAdSenseもますます洗練され勢力を伸ばしていくでしょう。世界にはまだまだ伸びる余地があると思われます。



サーチと広告、この2つはウェブだけに留まらず、新聞、雑誌、ラジオ、テレビ広告の分野を劇的に変えていっています。2008年はオールドメディアが
Google服従するか、対抗するかどちらかの決断を迫まれる時期になるでしょう。マードック氏のニューズ社のようにウェブに先手先手を打てないメディ
ア企業は衰退していくだけです。



■モバイル

 →Googleは携帯電話事業において3つの戦略を取っています。一つ目は米国で700MHzの周波数の入札に参加して携帯電話事業そのものに参入する
こと。2つ目はAndroid(ケータイのOS)を無料かつオープンに世界に展開すること。3つ目が日本におけるキャリアとの提携戦略ですでにNTTドコ
モとauとサーチのポジションを獲得しました。これは日本のケータイのモバイルウェブの実に95%のシェアを取ったことになり、ほぼ完全勝利と言えます。
Googleのモバイル戦略はとてもシンプルに描かれます。



 →日本のケータイでGoogleモバイルサーチとモバイルAdWords/AdSenseのノウハウを蓄積する

 →Androidを同時並行で世界展開し、Googleモバイルサーチの優位性を取り入れていき、アプリケーション、コンテンツベンダーに利益供給するダムとなる。日本で最新のエンジンをテストして、世界車を売ってそこでビジネス活動をさせるというものです。

 →そして周波数が取得できれば日本で培ったモバイルサーチ、ビジネスのノウハウと世界展開で無数に味方を付けたベンダーの力を借りてついに携帯電話事業に参入する、ということです。



こうしてウェブというのは巨大な海のようなものですが、太平洋をPCウェブとすれば大西洋はモバイルウェブであると言えます。陸を制するよりも海を制した方がビジネスとしては無限の可能性がありますね。



■リッチメディア(動画)

 →Googleはリスクを冒してYouTubeを手にいれたわけですが、見事2007年を生き延びました。生き延びただけでなくYouTubeがテレビ
を始めとするメディアに与えた衝撃はますます加速され、GoogleYouTubeを持っていることがモバイルキャリアとビジネス交渉していく上で強力
な武器になっていることを多くの方が気づいていません。

モバイル(携帯電話)がこのままブロードバンド化を進めていけば携帯電話キャリアは通信網をコントロールしながらリッチコンテンツを提供しなければなりま
せんが、携帯電話で10分以上の動画を見ることはありえないモデルだということはすでに証明されて、3分以内のコンテンツが95%を占めるでしょう。
YouTubeは動画シェアで80%以上であり、この圧倒的な市場支配力はYahoo!マイクロソフトも太刀打ちできません。



ちなみに僕はGoogleが2006年10月にYouTubeを買収した決断が、今後の携帯電話戦略やメディア戦略、広告戦略に与えたインパクトが強烈
だったと思います。Googleを語るとき創業時の1998年、IPOしたときの2004年、そしてYouTubeを買収した2006年はGoogle
に輝かしく残るでしょう。



それはGoogleという組織が、20世紀の法律やルールを超越した存在であることを世界に示し、生き延びただけでなくさらに成長を加速させたことで証明
されました。このように法律に挑戦し、ルールを自分たちで創るという強い意志を持った企業でない限りウェブでの戦いは勝ち残れません。



OpenSocial

 →Googleの最大の強みはウェブドキュメントのハイパーリンクをインデックスしてランキングするPageRankという技術です。これまでに何度も
書いてきたとおりです。しかしながら今ウェブの最先端のハイパーリンクはウェブドキュメントではなく、人と人のつながり、すなわちソーシャルグラフにあり
ます。Googleは残念ながらソーシャルグラフを持っていません。正確に言うとOrkutを持っているのですが、どうも忘れ去られて存在のようです。
OpenSocialGoogleのあせりのように見えます。まだ完全に出来上がっていないプラットフォームを早々と発表し、開発者をがっかりさせてい
ます。まるで97年のマイクロソフトがブラウザの重要性にようやく気づき本格的に参入した時を見るようです。この世界の相手はFacebookです。ここ
でおもしろい仮説を紹介します。



なぜMicrosoftGoogleをつぶせないのか。それはMSが得意とする無料戦略がGoogleには通用しないからです。Googleはサービスがほぼ無料だからです。



なぜGoogleFacebookに苦戦するのか。それはGoogleが得意とするアルゴリズムが人のつながり(ソーシャルグラフ)で通用しないからで
す。Googleといえど人のつながりをインデックスするには地道にやっていかないといけないのです。人のつながりは、人が多ければ多いほどつながってい
くものですから後から参入すればするほど資本力でも技術力でも対抗できません。Googleが唯一勝ち残るとすればMySpaceFacebookを買
収するしかないですが、それはまず無理そうなのでOpenSocialでその他全部を集めるという戦略なのです。OpenSocialの結果は2009年
〜2010年ごろ出るのではないかと思います。



Google中心主義と格差

 →ウェブにライフスタイルの軸を置いている人には感覚で理解できるのですが、ウェブに住み、ウェブで生きていくにはGoogleに頼らざる得ません。
20世紀の経済が銀行を中心に回っているように、21世紀のウェブ情報化社会はGoogleを中心に回っています。ウェブ経済圏=Google経済圏と同
義語となっています。



さてここで最近特に話題になっている格差について話をしてみたいと思います。みなさんが一般に理解する格差とは勝ち組と負け組みの経済格差だと思います。
日本でも中流がどんどん勝ち組と負け組に分かれて目に見える経済格差が広がっています。そしてグローバル経済から見てもスーパーリッチと単なるリッチと格
差が広がり、日本の一人当たりのGDPは先進国最下位で18位、これも経済格差でますます落ちぶれていくでしょう。



そして最近ウェブの世界でも格差が広がっています。それは地域格差ではなく、言語格差です。言語格差とは何かというと、ウェブの世界では米国に住んでいよ
うが、日本だろうが、中国だろうが、ヨーロッパだろうが関係ありません。大きく左右するのはどの言語のGoogleを使っているかです。



ウェブで日本語をまともに使える人口は世界で見ても1億人くらいでしょうが、ウェブの英語圏は母10億人〜くらいいるでしょう。その差がGoogle
AdWordsの競争価格に反映されています。単純にいうと英語でGoogle経済圏に入れる人は日本語Google経済圏より10倍規模が大きいという
ことです。カンのいい人ならすぐにピンとくると思いますが、これだけ経済規模に差があると、優秀な人は日本語サービスを開発するよりも英語で開発した方が
はるかに経済メリットがあると気づきます。もちろんその分競争は激しくなることは覚悟しなければなりません。



世界の経済は日本と米国で格差があるのに、ウェブの世界では日本語と英語で格差が生まれています。日本語が文化的にどうこうという意味はまったくないのですが、ウェブではそういう格差が生まれているのです。



日本でブロガーがAdSenseで生計を立てるのはほぼ不可能です。せいぜい10万円稼げたら御の字です。しかし海外では月に100万円を稼ぐブロガーは
たくさんいて、中には2000万円以上稼ぐブロガーもいます。どうでしょうか、みなさんは北尾社長が情報資本主義社会という言葉を使いますがその本質を見
抜いていますでしょうか。



これまで資本というのはお金(金とか不動産とか)だったわけですがGoogle経済圏では情報が資本になるのです。土地は地域によって価値が違いますがここでは言語の違いによってその価値が異なるのです。



このウェブ世界の言語経済格差に比べたら、今社会で体感している地域格差などは小さなおものに見えてくるでしょう。少しわかりにくい話だったかもしれませ
んが、経済格差はこれからもどんどん広がるでしょう。これはトヨタやキャノン、ソニーががんばったら日本の景気がよくなるというレベルではありません。石
油や資源の問題でもなく、中国の発展ともあまり関係がありません。情報が資本になるという無限の金脈を発見したGoogleのルールです。



銀行は一回に大金を預ける客よりも、毎日少しずつでも定額(以上)貯金する客の信用します。

Googleは一回に大量のウェブページを作る大手サイトよりも、毎日確実に更新するブログのページランク(信用)をあげます。



どちらも信用を得るには長い期間、確実にものごとを進める、ということが大事だということです。



SBI Robo 渡部薫